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第1回 糖質制限とケトン体

このコーナーでは、糖質制限に関する専門家の見解を掲載しています。第1回は「糖質制限とケトン体」です。

<執筆者略歴>
瓜生遥(うりゅうはるか)
ウェブデザイナー、プログラマーの社会人経験を経て看護師となる。
ケトジェニックダイエットアドバイザー
都内有名スーパー救急病棟勤務後、美容・アンチエイジング・ダイエットを通して糖質制限を知る。その後、今の糖質量の多いバランスの悪い食の在り方に疑問を持ち、現在の株式会社ソーシャルノードラボ専属看護師に就任。「もっと甘く、もっと美味しい」食の提供のため開発に入る。現在も、ケトジェニックダイエットをさらに深めるため日本ファンクショナルダイエット協会にて白澤教授のもと学び続けている。

 

アシドーシスとは

糖質制限の話をしている中で、糖尿病の方からケトアシドーシスや低血糖の危険性について聞かれることがある。

そもそもアシドーシスとは血中のphが大幅に酸性に傾くことにより、吐き気や疲労感、脱力感(代謝性)、眠気や頭痛(呼吸性)を感じ、重篤な場合は昏睡状態におちいる状態のことである。

このアシドーシスには肺機能の低下等により二酸化炭素が排出されないために血中の二酸化炭素量が上昇し酸性に傾くことでおこる呼吸性と、酸の過剰生成や摂取増加、酸排泄の低下、つまり下痢や腎不全、薬物の影響等、代謝異常によって酸性に傾く代謝性がある。phが酸性に傾くことでなるアシドーシスだが、原因によってそこに至る機序がそれぞれ違う。

そのため今回は、代謝性アシドーシスのなかでもグルコース代謝異常における糖尿病性ケトアシドーシスの機序と、糖質制限におけるケトン体生成がケトアシドーシスを引き起こすか?について説明する。

 

ケトン体とケトアシドーシス

まず初めに、ケトン体とはエネルギー代謝の過程で脂肪を分解するときに生成される遊離脂肪酸の代謝産物であり、アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸の総称である。このうちアセトンは揮発性が高いため主に呼気によって排出される。よくケトン臭(リンゴの腐ったような甘酸っぱいにおい)といわれているのは、アセトン臭のことである。残りのアセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸は血中へ移行する。(ケトン体そのものはグルコースに代わるエネルギーであり有用なものだが)この二つは酸性であるため、血中に過剰に増加すると血中pHを酸性に傾けてしまう。このようにケトン体(アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸)が増えて血液や体液が酸性になった状態をケトアシドーシスと言う。

インスリンは血糖値を下げるホルモンである。(血糖を下げるホルモンは唯一インスリンのみと言われていたが、最近ではマイオカインというホルモンが血糖値を下げる作用があると注目されている。)

血糖値の調整過程

まず血中のブドウ糖が上昇する(血糖値が上昇する)とインスリンが膵臓にあるランゲルハンス島(膵島)のβ細胞から分泌される。するとインスリンの働きによってブドウ糖は細胞に取り込まれ、エネルギーとして使用される。エネルギーとして利用されなかった余分なブドウ糖は肝臓や筋肉でグリコーゲンとなり蓄えられる。さらに余った余分なブドウ糖は壮大な貯蓄機能を持つ脂肪となり溜め込まれる。インスリンがしっかりと作用していると、血液中のブドウ糖がこの一連の流れをたどり速やかに処理をされ、血糖値が一定の状態まで下げられる。

糖尿病ケトアシドーシスの発生

さて問題の糖尿病ケトアシドーシスはインスリンの欠乏・作用不足によって引き起こされる、高血糖性の急性代謝失調である。インスリンが欠乏・作用不足になると、ブドウ糖が細胞に取り込まれず、エネルギーとして利用できなくなるため、体はエネルギー不足(飢餓状態)であると判断する。すると体はインスリン拮抗ホルモン(血糖値を上げるホルモン)によって肝臓のグリコーゲンの分解を更新させ、さらに血中のブドウ糖量を上昇させエネルギーを得ようとする。しかしインスリンは欠乏状態であるので、ブドウ糖エネルギーとして取り込まれず更なるグルコース代謝異常が起こる。また、ブドウ糖の利用低下とともに糖で得られないエネルギーを得ようと、脂肪や蛋白質の分解が亢進する。そして遊離脂肪酸が増加し肝臓で分解されることで代謝産物であるケトン体が生成され血中へと大量に放出される。大量のケトン体により血液や体液のHpは酸性にかた向き糖尿病性ケトアシドーシスとなる。

 

糖質制限から生まれるケトン体

では糖質制限によるケトン体生成はというと、インスリンの作用が得られている状態での糖質制限によるケトン体生成は生理的なものであり、糖尿病におけるインスリン欠乏での異常代謝ではない。

ここでよく勘違いされるのは、「ケトーシス」と「ケトアシドーシス」という言葉である。

ケトーシスとは血中のケトン体が上昇した状態で、ケトアシドーシスは血液や体液のphが酸性に傾いた状態のことである。通常、生理的なケトン体の上昇では身体のphはph7.35±0.05(7.30~7.40)程度に保たれ、酸性に傾くことはない。激しい運動や糖質制限、ファスティング等だけではなく、もともとケトン体は生理的に生成されており、有害なものでもない。むしろ今まで血液脳関門を通過するのは糖のみとされていたが、ケトン体はそこを通過し脳にエネルギーを送り込むことができることが分かってきた有用な物質である。

通常インスリンが作用し生理的にケトン体が生成され血中のケトン体濃度は上昇しているが、phが保たれている状態は「ケトーシス」、1型糖尿病等のインスリン欠乏による異常代謝によってケトン体が異常に生産され、血液や体液が酸性に傾きphに異常をきたした状態が「ケトアシドーシス」である。

 

糖質制限で低血糖になることはない

実際に私がケトジェニック(糖質制限)を実施した際には血中ケトン体が4700µmol/Lまで上昇した。静脈における総ケトン体の基準値26.0~122 µmol/l程度なので数値だけ見れば検査に引っかかるだろう。他にも症例では糖質制限を行い10000µmol/l近くまでケトン体量を上昇させた例もある。勿論いずれも異常は見られていない。

つまり、そもそも糖尿病ケトアシドーシスと糖質制限におけるケトン体の上昇とでは機序が違う。糖質制限によるケトン体の生産は生理的なものであり、生理的ケトン体の上昇ではケトアシドーシスになることはない。糖尿病性ケトアシドーシスはインスリンの欠乏によって代謝異常をきたしている病態なのだ。そのため、糖質制限におけるケトアシドーシスの心配はない。

  
株式会社Social Node Laboは「もっと甘く、もっと美味しく糖質制限」をテーマに低糖質食品の開発・販売を行っています。ホームページはこちらfacebookはこちらです。

<次回のコラム> 第2回 ケトン体によるアルツハイマー認知症の改善

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