このコーナーでは、糖質制限に関する専門家の見解を掲載しています。第2回は「ケトン体によるアルツハイマー認知症の改善」です。
<執筆者略歴>
瓜生遥(うりゅうはるか)
ウェブデザイナー、プログラマーの社会人経験を経て看護師となる。
ケトジェニックダイエットアドバイザー。
都内有名スーパー救急病棟勤務後、美容・アンチエイジング・ダイエットを通して糖質制限を知る。その後、今の糖質量の多いバランスの悪い食の在り方に疑問を持ち、現在の株式会社ソーシャルノードラボ専属看護師に就任。「もっと甘く、もっと美味しい」食の提供のため開発に入る。現在も、ケトジェニックダイエットをさらに深めるため日本ファンクショナルダイエット協会にて白澤教授のもと学び続けている。
もともと脳はグルコースしかエネルギーとして使わないと言われてきた。そのため、よく勉強や試験の前には『甘いものを食べると脳が働く』と言われ糖質量の多いものを摂取するようにいわれたものだが、今ではケトン体(β-Hydroxybutyric acid)がアセチルCoAとなり、脳のエネルギー源として使用されることがわかっている。
さて、アルツハイマー患者と健常者のSPECT画像を比較すると明らかな脳の血流低下、またMRI検査においても脳の萎縮が確認でき、脳へのエネルギー供給が正常に行われていないことがわかる。
では何故エネルギー供給が阻害されているのか? そこには、ミトコンドリアのエネルギー生産とアミロイドβタンパク(Aβ)というたんぱく質の神経毒性が深くかかわっているのだ。
①解糖系では、グルコースがピルビン酸に分解されミトコンドリア内に入り、アセチルCoAとなってエネルギーとして使用される。
②β-Hydroxybutyric acid(BHB)は、肝臓での遊離脂肪酸の分解によってBHBとなり、ミトコンドリア内でアセチルCoAとなりエネルギーとして使用される。
脳はこの①のグルコースのエネルギーと、②のBHBのエネルギーの二つを使用することができる。しかしアルツハイマー患者ではAβの増加がみられ、上記のようにAβの神経毒性によりミトコンドリアの機能に異常をきたし、グルコースエネルギーであるピルビン酸がアセチルCoAになるのを阻害される。さらにミトコンドリア電子伝達系には5つの膜結合複合体があり、そのうちのComplexⅢとComplexⅣもAβによって阻害されるため、脳でグルコースエネルギーが使用できなくなるのである。
このことからも、アルツハイマーが第三(脳)の糖尿病と言われているのがよくわかる。余談ではあるが、健常者は血糖値が低ければ低いほど認知症になりにくく、糖尿病の患者は血糖値が165㎎/dlあたりが最も認知症になりにくい。
米:メアリー・T・ニューポート医師は著書で若年性アルツハイマーになった自身の夫に対し、ココナッツオイルを1日60㏄飲ませるという治療を試みている。すると、若年性アルツハイマー末期の夫は劇的な改善をするのだが、これはAβによって阻害されているグルコースによるエネルギー供給を、ココナッツオイルを使用することでケトン体によるエネルギー供給にチェンジしたら認知力が改善したということだ。
これはとても理にかなった話である。
今まではAβによって脳へのエネルギー供給が阻害されていたために脳の活動低下、萎縮、血流低下がされアルツハイマー、認知力が低下しているわけだ。しかしメアリー医師はココナッツオイルによって脳のもう一つのエネルギー源であるケトン体を生産させ改善をさせたのだ。
彼女の本は全米でベストセラーとなり、その読者がアルツハイマーの家族にココナッツオイルを摂取させたところ改善したというデータが多く集まった。データによると大体要介護3~4だとしても、10人に9人は何らかの認知機能の改善がみられると言われている。
またアルツハイマーと深くかかわっているAβはケトジェニックを行うことによりその数を減少させることができる。もし家族に認知症の方がいるならば、ケトジェニック食とココナッツオイルを試してみる価値は大いにあるといえるだろう。
ただし、しっかりと血中のケトン体濃度をUPさせなければ認知機能の改善はしない。なので、間違ったケトジェニック(糖質制限)やココナッツオイルの摂取を行っても効果が見られない。また日本人には稀であるがAPOE4という遺伝子をもつ人はケトン体が効かない。APOE4はミトコンドリアComplex5を阻害するためにケトン体もエネルギーとして使えなくなってしまうのである。
ココナッツオイルを入れるものはコーヒーでも豆乳でもよいが(乳化させやすいのは豆乳だと思うが)、乳化させることが重要である。ココナッツオイルは乳化させることによって吸収がUPする。ミキシングして乳化させて摂取することを心掛けると良いだろう。しっかりと吸収させることで、効果を最大限に発揮させたい。
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<前回のコラム> 第1回 糖質制限とケトン体
<次回のコラム> 第3回 糖と麻薬作用について